まず、柿山伏(かきやまぶし)という狂言を鑑賞しました。
喉が渇いた山伏が柿の木を見つけ、木に登って柿を食べ、誤って口にしてしまった渋柿を投げ捨てたところ、持ち主に当たって無断で柿を食べていたことが気付かれてしまう。柿の木に登っているのは烏だ、猿だ、鳶だと言われる度に、それらの動物の鳴き真似でその場を凌ぐものの、しまいに鳶は飛ぶものだ、と言われてしまう。結局飛んでは見るものの、大怪我をしてしまい悪事が露呈してしまう。・・・という話でした。
その後、能で使用する笛、小鼓、大鼓、太鼓などの紹介を受けたり、休憩時間には装束や能面、扇などの展示物の説明を聞いたりして、能楽の学習をしました。
後半は、「黒塚」という演目を鑑賞しました。
巡礼の旅に出た山伏が、老媼の住む粗末な小屋に一夜の宿を借りる。老媼は自らの苦しい身の上を嘆きつつ、求められるまま枠桛輪(わくかせわ)で糸を繰りながら糸尽くしの歌を謡う。やがて夜も更け、老媼は暖を取るための薪を取りに出かける。その際に「留守中、決して私の寝所を覗かないでください」と山伏たちに頼んで出かける。
山伏に仕える能力は、寝所の中が気になって仕方がない。山伏との攻防の末、ついに密かに部屋を脱け出して寝所を覗くが、そこには大量の死体が積み上げられていた。知らせを受けた山伏は、「黒塚に住むという鬼は彼女であったか」と家から逃げ出すが、正体を知られたと悟った鬼女が怒りの形相で追ってくる。山伏は数珠を擦って何とか鬼女を調伏し、鬼女は己の姿に恥じ入りながら去っていくという話でした。
見終えて、私は鬼女の心の奥にある嘆きや憎しみのようなものを感じ、心が重く、なぜ老媼が鬼女になってしまったのか、過去にどんな出来事があったのかと同情的な思いになりました。本当に薪を取りに出かけ、山伏たちをもてなそうとする優しさがありながらも、約束を破られたことで鬼に化してしまった。何か過去に裏切られた強い怨念をもつに値するようなものがあったのかなと思いました。人には優しい心と相対する鬼のような心の両面をもっており、その心を使う使わないは自分であり、また周りの人がそうさせる、だから普段から行いや言葉に注意しなさいと訴えているかのような話でした。
さておき、初めて本格的な能楽に触れさせてもらい、本当に感動しました。演目に関わっているすべての演者の方の1つ1つの動作から、日本の品位ある礼儀作法、そして日本人の心に生きているなと感じることができました。日本の伝統芸能の良さを子どもたちもきっと感じてもらえたことでしょう。