修学旅行裏日記⑤(最終回)〜父の帰還〜
2023年10月12日 19時22分こんばんは、村瀬です。
本日は2時間目の終わりあたりから、
6年生が登校しました。
思っていたよりも元気そうな顔が多く、
旅行が充実したものになったのかなと感じました。
一方の村瀬は、
何もしていないくせに身体が鉛(なまり)のように重く、
30秒に一度のペースであくびをする始末。
困ったものです。
ところで昨晩は、
子どもたちから旅行の思い出を訊(き)くことができたでしょうか?
それとも疲れて、さっさと眠りについてしまったでしょうか?
オフィシャルページはちゃんと昨日締(し)めくくることができましたが、
こちらのしょーもない旅行記を締め忘れておりましたので、
最後に我が家の昨晩の風景をお伝えして、完結させたいと思います。
父「皆のもの、喜べ!父が無事帰還したぞ!」
娘「おかえりなさいませ、父上」
父「うむ、心配をかけたのお。
しかし、まーがれっと(通称)よ、安心せよ。
父は見ての通り、元気じゃ」
娘「そんなことはどーでもよろしゅうございます。
して、父上、約束の物は?」
父「はっはっは。そなたはせっかちじゃのう。
父が約束を忘れるわけあるまい。
米国の「落花生(らっかせい)」という名の漫画に出てくる、
耳の黒い犬の鍵飾りであったな」
娘「左様(さよう)でございまする。
さっさとお出しくださいませ」
父「父はこれを買うために、奈良の地に集まっていた、
見知らぬ小学生たちが密集している土産物屋に入り、
この可愛らしい鍵飾り一つだけを持ち、
彼らと共に静々(しずしず)とレジまで並んだのじゃ。
ジロジロ見られて顔が赤くなりつつ、
店員殿に聞かれてもいないのに、
『これはお土産です』となぞの言い訳をしつつ、
手に入れた貴重な物なのじゃぞ」
娘「父上、前置きはどーでもいいのです。
早うくだされ」
父「仕方ないやつじゃ。ほれ」
娘「・・・」
父「どうした、そんなに鍵飾りを見つめて。
ほほう、感動のあまり、言葉がつまったのじゃな。
けっこうけっこう」
娘「いえ、父上。
これは、実にダサい。ダサすぎでございまする」
父「な、何を申す!
そなたの好きな犬と、
さらに好きな黄色い小鳥まで描かれているではないか!」
娘「他にはなかったのでございますか?」
父「う〜ん。
その者達の他に、何やら気弱そうな男の子やら、
布切れを持った男の子やら、
髪を二つに束ねた女の子やら、
たくさん集合していたものもあったが・・・」
娘「なぜそちらにしなかったのですか!
父の美的感覚の乏(とぼ)しさには、
ほとほと愛想(あいそ)がつきまする」
父「・・・」
まーがれっとはため息と共に去っていき、
入れ替わりで息子まいける(通称)がやってきました。
父「おお、まいけるよ、よいところにきた!
そなたには、洋菓子(ようがし)を買(こ)うてきたぞ」
息子「左様でございますか」
父「ほら、これじゃ。
京の都で大流行(はや)りの、
木の年輪(ねんりん)をかたどった菓子じゃぞ」
息子「・・・」
父「どうした、そんなに菓子を見つめて。
ほほう、感動のあまり、言葉がつまったのじゃな。
けっこうけっこう」
息子「いえ、父上。
拙者(せっしゃ)抹茶(まっちゃ)味が苦手でござる。
ですので、遠慮申し上げる! これにて、ごめん」
父「・・・」
まいけるは呆(あき)れながら去っていき、
入れ替わりで相方がやってきて、無言で手を出してきました。
父親はそこでハッとします。
相方のお土産を忘れていたのです。
父「あ、そうじゃった、そうじゃった。
この洋菓子はそなたに渡そうと思っていたのじゃ・・・」
相「・・・」
相方は無言で目を鋭(するど)くします。
父「じょ、冗談(じょうだん)、冗談じゃよ・・・。
どれ、このかばんの中に・・・」
お土産などもうないかばんに手を入れる父親。
すると、1枚の紙が手に触れました。
それは、昨晩、座禅体験で配られた説明書でした。
父親はそれを取り出し、相方に告げます。
父「これじゃ、これじゃ。
これはかの名刹(めいさつ)妙心寺の住職にいただいた、
由緒(ゆいしょ)正しき紙であるぞ。
ほれ、これを見れば、座禅の仕方が一目瞭然(りょうぜん)じゃ。
座禅は、怒りを鎮(しず)めるともいう。
そなたにぴったりじゃろう! はっはっはっ」
相方は一段と目を険(けわ)しくして、去っていきました。
そして父親は、いつも通り独りぼっちになり、
涙を流しながら、夜遅くまで座禅を組んでいましたとさ。
ということで、これにて修学旅行裏日記、
終幕でございまする。
それでは、また。